世界の中でも巨大な資産を動かすヘッジファンドとして知られる「ブリッジウォーター社」。
今回ご紹介するのは、そんなブリッジウォーター社の代表でもあるレイ・ダリオ氏が個人投資家に向けて紹介した「オール・シーズンズ戦略」です。
「オール・シーズンズ戦略」は、あのリーマンショック時でも3%以上プラスになったというポートフォリオ。
現在のコロナ禍でも大きな影響を受けていないのも特徴です。
これからFXをしていこうと思っている方は、ご紹介する内容をぜひ参考にしてください。
FXにおけるオール・シーズンズ戦略の特徴
ご紹介した通り、オール・シーズンズ戦略とは巨大な資金を運用している世界屈指のヘッジファンド、ブリッジウォーター社の代表、レイ・ダリオ氏が個人投資家に向けて紹介しているポートフォリオです。
そもそも、ブリッジウォーター社はオール・シーズンズ戦略とは別に「オール・ウェザー戦略」というものを実践していました。
この戦略はかなり高度な金融手法を取り入れたもので、企業ならまだしも個人が実践するのは難しい内容です。
オール・シーズンズ戦略は、そんな企業向けのオール・ウェザー戦略の特徴を採用し、個人投資家向けにしたもの。
この戦略の大きな特徴は、相場の下落に強いことです。
オール・シーズンズ戦略のパフォーマンスを1935年から約80年間見ていくと、1937年のパフォーマンスが-9%となっていますが、1941年以降はそれ以上のマイナスはなく、ITバブルやリーマンショック時も特に影響を受けていません。
また、1984年以降の約30年間で手数料控除後のリターンが年換算9.72%となっていて、こちらもかなり良い結果であることが分かります。
近年の状況はどうかというと、リーマンショック直近の2007年元旦から2021年12月末までは常に上昇傾向となっていて、コロナ禍中でも影響を受けていません。
2007年から2021年までの約15年間では、リターンは年換算で8%となっていて、こちらもかなり良い成績を叩き出しています。
「黄金のポートフォリオ」とは?
オール・シーズンズ戦略は別名「黄金のポートフォリオ」とも呼ばれています。
その内容はアンソニー・ロビンスの著書「世界のエリート投資家は何を考えているのか」の中で詳しく触れられています。
まずはポートフォリオ内で占めている投資の割合を見ていきましょう。
・株式…30%
・7~10年満期の中期米国債…15%
・20~25年満期の長期米国債…40%
・金…7.5%
・商品取引…7.5%
これらの内容は、他のモデルポートフォリオと比べるとかなり違うのがお分かりいただけるのではないでしょうか?
大きな違いは、オール・シーズンズ戦略では全体の半数以上が債券となっていることです。
個人投資家が活用するポートフォリオと比べると大きな違いではないかと思います。
さらに、特徴の2つ目は金と商品取引(コモディティ)の割合が大きいこと。
両方とも7.5%、合わせると15%となっています。
オール・シーズンズ戦略はアメリカ在住の個人投資家向けに紹介されているため、対象は米国市場となっています。
そのため、日本円に馴染みがある私たちにとって最適ではないと考える方もいるかもしれませんが、ドル建てでこのオール・シーズンズ戦略を実践すれば、収益をより得やすくなるという点はデータから見てもかなり信頼できる事実だといえるでしょう。
オール・シーズンズ戦略の構成要素ごとの実践ポイント
オール・シーズンズ戦略にはご紹介した通り複数の構成要素があります。
ここからは、そんな構成要素をひとつずつ紐解きながら解説していきます。
・株式
オール・シーズンズ戦略の提唱者、レイ・ダリオ氏は、S&P500やその他のインデックスに連動するETFを用いながら、株式のエクスポージャーを保持するよう紹介しています。
中でもおすすめなのは次の4点です。
~S&P 500~
・VOO(Vanguard/経費率0.03%)
・IVV(BlackRock/経費率0.04%)
~中小株を含んだ米国市場全体~
・VTI(Vanguard/経費率0.03%)
・ITOT(BlackRock/経費率0.03%)
この中の1つでも良いですし、複数でもOKです。
ここに、全体の30%ほどの資金を投資するのがオール・シーズンズ戦略では効果的だと考えられています。
2タイプどちらを選択しても大きな差はないと考えられていますが、今後の展開を長い目で見ると中小株を含んだ米国市場全体の方が、大型株の指標を上回るという研究も出ているようなので、この辺りを参考にしながらどれに投資するか決めるのも良いでしょう。
・債券
次にオール・シーズンズ戦略の中でも大きなウエイトを占める債券についてです。
なぜ55%という大きな投資額を国債に投じているかというと、債券には収益を安定させ、株式のリスクを相殺、軽減する効果が期待できるためです。
株式と比べると債券の動きは小さく、金利の引き下げは債券価格を高めてくれます。
つまり、ポートフォリオ全体の大きな変動を抑制しながら、経済や金融危機で株価が下落した際には、中央銀行が経済を回復させるための利下げを行うため、その影響を利用して値動きを上昇させることも可能なのです。
このように、債券を活用することで危機的な状況でもリスク回避することができるので、こちらも合わせてチェックしておきましょう。
ちなみに、1980年からの約40年間、金利はかなり下がっていたことからも、債券には大きなメリットがあることが分かります。
ですが、コロナのパンデミックの影響で、金利がこれ以上下がる余地がない状況となっているので、これから先は金利上昇のリスクを考えて投資を行うことも検討する必要がありそうです。
・金と商品取引(コモディティ)
戦術で解説した通り、オール・シーズンズ戦略では、金と商品取引(コモディティ)を計15%含みます。
金とコモディティを含めることに対してメリットがないと感じる方もいるかもしれませんが、これらはインフレのタイミング弱い債券を補うことができるなど、メリットも多くあります。
また、金は戦争や紛争などで治安が著しく低下した時に通貨などよりも売買の動きが盛んになるともいわれています。
このような時の備えとしても、金に注目しておくべきでしょう。
ちなみに、金は過去リーマンショックが発生した時もポートフォリオ全体の状態を保つのに有効でした。
リーマンショックの際は株式だけではなく国債も下落してしまいましたが、金があったからポートフォリオ内は大きな変動なく、保つことができたのです。
オール・シーズンズ戦略を紹介しているレイ・ダリオ氏は、ポートフォリオに金を含めることは非常に有効であると考えています。
現に多くのプロの投資家もポートフォリオ内の1割ほどを金にしていて、その意義は過去の状況から見てもとても大きいことが分かります。
ちなみに、1973年から1年間は高インフレと金利の引き下げが発生し、株式市場の変動が激しい時期でしたが、その一方で金や原油は大幅に値上がりしていることからも、ポートフォリオ内に分散して組み込むことの重要さが認識できます。
オール・シーズンズ戦略を活用した投資方法
ご紹介したオール・シーズンズ戦略を基に投資方法を考えていきましょう。
・株式
おすすめは国債分散投資です。先進国株や新興国株など、3つほど月々分散して投資することでリスク回避をしながら着実に資産を増やすことが期待できます。
ちなみに、レイ・ダリオ氏は新興国株を多く保有しています。
株式はグローバルに考えつつ分散投資でリスク回避をしながら積立を続けていくのが良いでしょう。
・債券
債券は単品でもリターンが期待できて、リスクを相殺、軽減できる点がメリットでしたが、今までのようなリターンを得られないことも考えられます。
オール・シーズンズ戦略では債券の比率が半数以上となっていましたが、今後はこの比率を少しずつ減らし、株式や金、コモディティの比率を増やしていくことが求められていくでしょう。
・金
オール・シーズンズ戦略でも重要視されている金。
ご紹介したポートフォリオでは7.5%となっていましたが、債券の比率を少なくすることを考えると10%を上限に保有することを検討してみるのも良いでしょう。
ぜひこの機会に金ETFや金鉱株をチェックしてみてください。
・コモディティ
資源である石油や鉱物、穀物メジャーへ分散投資を行い、コモディティへの投資に繋げていきましょう。
まとめ
オール・シーズンズ戦略は多くの投資家が注目しているポートフォリオ。
ポートフォリオに組み込まれている内容は、従来見てきたポートフォリオとは異なるかもしれませんが、データ上も有効性が認められています。
今後は債券の状況が変化していくとも考えられるので、個人投資家の方は紹介した内容を参考にしつつ、ご自身の投資に役立ててみてくださいね。